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「ワンダ・ガアグ 若き日の痛みと輝き」

ワンダ・ガアグ 若き日の痛みと輝き―『100まんびきのねこ』の作者が残した日記

ワンダ・ガアグ 若き日の痛みと輝き―『100まんびきのねこ』の作者が残した日記

 

「100まんびきのねこ」という絵本がおもしろくて、作者のワンダ・ガアグの他の作品はないかと調べていて出会った本です。

 

ワンダ・ガアグがどんな人なのか、知りたくて読んでみました。

 

ワンダ・ガアグという人は、アメリカの女性で、東欧からの移民である父母を持ち、小さい頃からヨーロッパの昔話を聞いて育ったそうです。父親は画家でしたが、彼女が15歳の時に亡くなってしまいます。父親は最後に「パパは何もできなかったから、ワンダは最後までやり遂げてくれ。」といったそうです。(Wikipediaより)

 

それはなにを意味していたでしょう。

 

ワンダの下には6人の弟、妹がいました。ワンダはジャーナルジュニア(こども新聞)に絵やお話を投稿し、賞金をもらったり、ポストカードや席次表の絵を描くこまごまとした仕事を引き受けながら高校をなんとか卒業。学校で教師をした後、奨学金やいろいろな人の援助を受けて、美術学校に通えるチャンスを逃さず、いくつかの美術学校に通い、広告の仕事をした後、画家として数々の個展を成功させ、絵本作家としてはニューベリー賞やコールデコット賞をとるなど認められます。24歳で母を亡くしますが、弟や妹を全員高校まで出してやります。

 

父親を亡くし、面倒を見る6人の兄弟がいる状況で、芸術を、描くことをあきらめないためには並大抵でない胆力が必要だとおもいます。父親との約束が彼女を支えたに違いありません。

 

この本は主に高校から美術学校に通っている時のガアグの日記がまとめてあるのですが、経済的な苦境に立ち向かい、家にいる時は家事に追われ、でも描かずにはいられないのでとにかく描きまくる。悩みながらもがきながら、でも芸術の道をあきらめず、兄弟たちにも高校までの教育は受けさせると決意して進んでいくガアグ。

 

読み始めたらとまらなくなってしまいました。

 

一九一五年四月四日ーー自らをありのまま受け入れ、最大限生かしていくのが一番だと思う。私のように画家の娘として生まれ、偏見のない心と、誘惑を退ける強い性格を受け継いだならば、そこから出発して、できるかぎりのことを為し遂げよう。(中略)最善を尽くしているといって、褒めてもらうこともない。それは私の義務だし、むしろ最善を尽くさないといって責めを負うべきだと思う。

 

「100まんびきのねこ」という絵本がアメリカで出版されたのはなんと、1928年。今に至るまで長い間名作として愛され続けています。彼女の画家としての力量、こどもたちへの愛、彼女の中に蓄積されていたヨーロッパの昔話、お話作りや日記に現れている文章力、そういうものが結実した作品だからなんでしょうね。