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読書をしながら、子育てしながら、お仕事しながら、人間の内面についていろいろ考えたりする毎日

アーノルド・ローベル「ふたりはいっしょ」

 

ふたりはいっしょ (ミセスこどもの本)

ふたりはいっしょ (ミセスこどもの本)

 

 この本は名作すぎるほどの名作で、しかも有名な絵本だとおもうのですが、わたしはなぜか読んだことがありませんでした。

 

上の子がこのシリーズの「おてがみ」というお話を学校でやっていたのですが、なかなかいいお話だったので、下の子用に図書館で借りてきたものです。

 

短いお話がいくつか入っていて、どれもいいですね。

 

一見なんてことないように見えるのですが、何度読んでも飽きないです。

 

特にわたしの心に響いたのが「はやくめをだせ」というお話でした。

 

かえるくんのにわがうらやましくなったがまくん。かえるくんはそんながまくんに花の種をあげます。

 

「ここに花の たねがあるよ。じめんに まけば、じきに きみの にわが

できるよ。」

「じきってどの くらい かかるの?」がまくんがききました。

「すぐ じきさ。」かえるくんがいいました。

 

 こういうがまくんとかえるくんのやりとりが、味があって好きです。

 

「じきに」花が咲くと聞いたがまくんは走って家にかえってたねをまきます。

 

「さあ、たねよ、」がまくんは いいました。

「大きく なあれ。」

がまくんが 二、三度

いったり きたり しました。

たねたちは 大きく なりません。

 

このほのぼのしたユーモアがたまりません。

 

どうして芽がでないのかわからないがまくんは大きな声でたねによびかけつづけ、しまいにかえるくんがそれを聞きつけてやってきます。

 

「この さわぎは いったい なんだい?」

かえるくんが たずねました。

「ぼくの たねったら 大きくなって くれないんだ。」

がまくんがいいました。

「大きな こえを だしすぎるんだよ。」

かえるくんが いいました。

「かわいそうに たねたちは おっかなくて

大きくならないんだ。」

 

 かえるくんは

 

「二、三日 ほうっておいてごらんよ。 日をあてて 雨に うたせてやりなよ。

じきに きみの たねたちは

大きく なりはじめるよ。」

 

とがまくんに教えてあげます。

 

その ばん、がまくんは まどから 

そとをながめました。

「ちぇっ!」がまくんは いいました。

「ぼくのたね 大きくならないや。

きっと くらいのが こわいんだ。」

がまくんは 何本もろうそくを もって

にわに でました。

「おはなしを よんで あげるからね。」

がまくんが いいました。

「そう すりゃ こわく なくなるだろ。」

がまくんは たねたちに ながい おはなしを

よんでやりました。

 

おとなの読者からすれば、そんなの芽がでるかどうかに関係ない、といいたくなるところです。でも、がまくんはどうすれば芽がでるのかは知らずにやっているのです。わからないから、種によいとおもわれることを一生懸命やってあげるのです。自分がやってもらったらうれしいとおもうことをしているのかもしれません。

 

がまくんは他にも一日中うたをうたったり、詩をよんであげたり、音楽をきかせてあげたりします。

 

がまくんは じめんを 見つめました。

たねたちは まだ 大きく なりません。

「ぼく どう したら いいだろ?」

がまくんが さけびました。

「きっと これ せかいじゅうで いちばん 

こわがりやの たねなんだ。」

 

それから がまくんは ぐったり つかれて

ねむってしまいました。

 

そのあと 起きてみるとかえるくんがいて、たねから芽がでていました。

 

「ああ とうとう。」

がまくんは さけびました。

「ぼくのたね、 おっかながる こと やめて

大きくなりだしたんだ。」

「いま きみにも、 いい にわが 

できるところだよ。」

かえるくんが いいました。

「うん、そうだ、」がまくんが いいました。

 「でも かえるくん。きみの いう とおりだよ。

とても たいへんな しごとだったよ。」

 

ここまで読んでわたしは、敏感さを持った上の子に対して、どうしてあげたらいいかわからずに、奮闘してきた日々を思ったのでした。

 

本当に、泣いてぐずってなにかを訴える我が子を目の前にして、どうしてあげたらいいのか、なにを求めているのか、どうしたらこどもが楽になるのか、見当もつかなかったのです。

 

なので、全力でいいとおもわれることをなんでもやってきたのです。

 

がまくんのように見当違いのこともたくさんやったとおもいます。

 

その中でなにがよかったのか、定かでない部分もあります。

 

でもふと気がつくと、大人を困らせるような過敏さは影を潜め、敏感さという長所にも短所にもなる個性は持ったまま、すくすくと成長しているこどもの姿がありました。

 

それも「ぐったり疲れて眠って起きてみると、芽が出ていた。」という感覚にぴったりくるのです。

 

 よくわからないけど我が家の「おっかながりやのたね」は、親が全力を尽くして自分のためになにかしてくれている、ということはなんとなく感じて、こういう場所なら安心して芽を出せるな、とおもってくれたのでしょうか。

 

 「たいへんだったけど がんばったね」とがまくんにねぎらってもらったような気持ちになったのでした。