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読書をしながら、子育てしながら、お仕事しながら、人間の内面についていろいろ考えたりする毎日

失敗は終わりではないということ

子育てって本当に親の個性、子の個性、家庭の空気や状況などいろいろな要素が絡み合って、その中で子は例えば植物が芽を出して葉を伸ばし、すくすく成長していくように、その子の持っている力で成長していくものだと思います。

 

だから、親の側から見るとさまざまな子育てがあるし、子の側からみると、いろいろな育ちがあるのでしょう。

 

子の育ちという意味では同じように育てられている兄妹でまったく違う個性が花ひらくことからみても、子育てが公式通りの結果が出るようなものではないことがわかります。

 

そういう意味で、表面的には同じような子育てをしているように見えても、「この子は心配ないな」と思える場合と「だいじょうぶかな?」と心配になってしまう場合があります。

 

例えば、習い事をたくさんしている、とか塾に通って受験勉強をしているとか。そういうのってだからいい、とかだからだめ、とか一般論でいえることじゃないですよね。

 

心身ともにタフな子で、親子の信頼関係がしっかりしている場合は、そのくらいの負荷がちょうどよくて、伸びていける場合もあるかもしれません。

 

でも自分で主体的に選んだことをしっかりやりこむような体験が不足していて、親が与えるものを「なんか楽しくない」と思いながらそれをことばにできなくて、なんとなくつまらないとおもいながら、こなしているような場合、親子で衝突したりうまくいかなくなることもあるかもしれません。

 

そういう時、親は「失敗した!」と思ってあせってしまいがちですが、でも実はそこが始まりなんだと思うんですよね。「なにかおかしい、うまくいってない」というサインが出たのだから、ここで軌道修正すればいいんだっておもって、じっくりこどもと向き合ったらきっといい方向に向かうとおもいます。

 

目の前のこどもをよく見て、何が足りないのかよく考える。自分のこどもの頃を思い出してなにがいやで、なにがうれしかったか思い出してみる。自分の思いをこどもに押し付けていないだろうか、こどもは本当にしたいことはなんだろう。自分は本当にしたいことをして生きているだろうか。

 

子育てしていれば、試練は何度も訪れますが、そのたびに親も子も、より生き生きと自分らしく生きる生き方に少しずつ近づいていけたらいいですね。

 

現代は「失敗」ということに非寛容な面があり、すぐに失敗したと感じ、失敗したら終わりだと絶望してしまう人が多いと感じています。

 

ゲド戦記を書いたアーシュラ・K・ル=グウィンという作家の文章で「左ききの卒業式祝辞」というのがあってとても素敵なので紹介したいと思います。1983年に発表されたものです。(文章からすると、実際に女子大の卒業式で行われた講演の記録ではないかと思います。)

 

成功とは他の人の失敗を意味します。成功とは私たちが夢見つづけてきたアメリカン・ドリームです。我が国の三千万を含む様々な地方の人々の大半は貧困という恐るべき現実をしっかり見据えながら生活しているのですから。

 

そう、私はみなさんに御成功を、とは申しません。成功についてお話する気もありません。私は失敗についてお話したいのです。

 

なぜなら、みなさんは人間である以上、失敗に直面することになるからです。みなさんは、失望、不正、裏切り、そして取り返しのつかない損失を体験することでしょう。自分は強いと思っていたのに実は弱いのだと気づくことがあるでしょう。所有することを目指して頑張ったのに、所有されてしまっている自分に気づくでしょう。もうすでに経験ずみのことと思いますが、みなさんは暗闇にたったひとりで怯えている自分を見出だすことでしょう。

 

私がみなさん、私の姉妹や娘たち、兄弟や息子たちすべての人々に望むことはそこ、暗闇で生きていくことができますように、ということなのです。成功という私たちの合理的な文化が、追放の地、居住不可能な異国の地と呼び、否定しているそんな土地で生きていくことを願っています。

  

私はみなさんが犠牲者になることなどないよう望みますが、他の人々に対して権力を振るうこともありませんように。そして、みなさんが失敗したり、敗北したり、悲嘆にくれたり、暗がりに包まれたりしたとき、暗闇こそあなたの国、あなたが生活し、攻撃したり勝利を収めるべき戦争のないところ、しかし未来が存在するところなのだということを思い出してほしいのです。私たちのルーツは暗闇の中にあります。大地が私たちの国なのです。どうして私たちは祝福を求めて天を仰いだりしたのでしょうー周囲や足下を見るのではなく? 私たちの抱いている希望はそこに横たわっています。ぐるぐる旋回するスパイの目や兵器でいっぱいの空にではなく、私たちが見下ろしてきた地面の中にあるのです。上からではなく下から。目をくらませる明かりの中ではなく栄養物を与えてくれる闇の中で、人間は人間の魂を育むのです。

 

マイノリティのことをいっているようでもあるし、女子大での講演なのでもちろん社会に進出する女性へのメッセージでもあるのですが。

 

成功を追い求めすぎる傾向があるすべての現代人が、深く噛み締めたい文章でもあります。

 

 成功があるということは失敗もある。失敗を忌み嫌って遠ざける生き方より、失敗と仲良くなる、そういう生き方が真の意味で豊かで創造的な生き方なのではないかと考えさせられます。

 

引用はこちらの本からです。

世界の果てでダンス

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